登記名義人住所変更登記の場面では、登記簿上の所有者と申請人が同一人であることを証明するために、登記簿上の住所まで遡る(移転経緯が分かる)住民票や戸籍の附票を添付しなければなりません。
例えば、甲田乙男さんが住所A(登記簿上の住所)→住所B(前住所)→住所C(現住所)と住所を何度も移転している場合を考えてみましょう。
通常、現住所の住民票を取得しても前住所までしか記載されていません。住所Aに遡るためには、「戸籍の附票」や住所Bの「住民票除票」、場合によっては「除かれた戸籍の附票(除附票)」や「改製原附票」をも用意する必要があります。
しかし、住民票や戸籍の附票の保存期間は除かれてから5年(令和元年6月20日より150年間)とされており、必要な書類がすでに廃棄されている場合があります。
この場合は、実務上、以下の書類を添付して登記簿上の所有者と申請人が同一人であることを証明することとされています。
(1)住民票と戸籍の附票(除票や改製原を含む)
取得可能なすべての住民票と戸籍の附票を添付します。
「努力したけど登記簿上の住所まで遡れませんでした。」と登記官に伝える意味合いもあります。
(2)不在籍証明
不在籍証明は、登記簿上の住所を本籍地とした同じ氏名の人が現在はいないということを証明する書類です。本籍地の市区町村役場で発行されます。
(3)不在住証明
不在住証明は、登記簿上の住所を住所地とした同じ氏名の人が現在はいないということを証明する書類です。住所地の市区町村役場で発行されます。
(4)対象不動産の権利証(または登記識別情報)
対象不動産の権利証は、登記名義人住所変更登記の場面では本来は添付書類ではありません。権利証を提出する代わりに公的な証明書である住民票や戸籍の附票によって住所移転の経緯を証明することができるからです。
しかし、申請人と登記簿上の所有者の同一性が確認できない以上、強力な所有者確認手段として権利証あるいは登記識別情報を求めるのは当然の帰結と言えるでしょう。
なお、上記(2)~(4)の書類は、厳密に言えば住所移転を積極的に証明するものではなく、「たぶん同一人だから住所移転を認めて大丈夫だろう」と登記官に思ってもらうための消極的証明手段です。
法務局の裁量が大きく働く部分ですから、住所が繋がらない場合は、何をもって良しとするかを必ず事前に確認しましょう。
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