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4-3. 相続放棄・限定承認・期間伸長

更新日:

相続放棄・限定承認・期間伸長-登記なび

ここでは相続放棄や限定承認、それらの期間伸長について見ていきましょう。

相続人の範囲に属する人も、自らの(または相続人全員の)判断で相続権を放棄(または一部のみ相続)することができます。

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相続放棄

相続放棄とは、相続人の範囲に属する人が、自らの判断でその相続権を放棄することです。

相続放棄できる期間や方法が法律で決まっていますので、ご注意ください。

 

相続放棄するか否かの検討

相続とは、被相続人の有していた不動産や預貯金などのプラスの財産だけでなく、ローンや負債などのマイナスの財産もすべて引き継ぐことです。不動産は欲しいけどローンは払いたくない、などとは言えません。

相続財産がトータルでプラスになる場合は単純に相続してしまえば事足りますが(単純承認)、トータルでマイナスになる場合は相続するか否か慎重に検討すべきでしょう(相続放棄か限定承認か)。

逆に、明らかなマイナスの場合は、ご自身の今後の生活も考えて相続放棄を選択するのも決して悪いことではありません。

 

相続放棄の熟慮期間

相続放棄は、原則として自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内に家庭裁判所に申述(相続を放棄します、との書類を提出すること)しなければなりません。これを「熟慮期間」といいます。

「自己のために相続の開始があったことを知った時」とは、普通は被相続人の死去の時です。

ただし、「長らく行方不明だった父親が死亡した旨の通知が来た」とか「アマゾンの奥地で仕事をしていて連絡の手段が何もなく、日本に戻ると母親が死亡していた」とか「家族とは絶縁状態で死亡した旨の連絡ももらえず、後日人づてに聞いた」など、明らかに死去直後に知る術がなかった場合は、その“知った時”が起算日になります。

Point

  • 相続放棄は、原則として「自己のために相続の開始があったことを知った時」から3ヶ月以内にしなければならない。単純に「被相続人の死去の時」ではない。

 

相続放棄の申述方法

相続放棄の申述方法は次のとおりです。

 

申述先(書類提出先)

被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に申述します。⇒裁判所の管轄を調べる

 

必要書類

申述の際の必要書類等は次のとおりです。

なお、以下に記載の必要書類は裁判所ホームページで公開されている一般的なものです。

各裁判所には独自のローカルルールが存在することがあり、場合によっては追加の書類を求められることがあります。ご自身で手続きする場合は、事前に申述先の裁判所へ確認した方が良いでしょう。

※重複する書類は1通提出すれば足ります。

※同一の被相続人について、相続放棄申述受理事件または相続の承認・放棄の期間伸長事件が先行している場合、先行事件で提出済みのものは再度提出する必要はないとされています。

相続放棄の申述書

申述書の書式や記載例は裁判所ホームページにありますので、印刷してご利用ください。(外部リンク:相続の放棄の申述書(20歳以上)

被相続人の住民票除票または戸籍の附票

住民票除票・戸籍の附票は本籍も記載されたものを取得しましょう。⇒住民票の取得戸籍の附票の取得

被相続人の最終の戸籍謄本

被相続人の死去の記載のある最後の戸籍は、申述人が誰であれ必ず提出します。⇒戸籍の取得

申述人の戸籍謄本

相続放棄する人(申述人)の最新の戸籍を提出します。被相続人の死去後に取得したものが必要です。⇒戸籍の取得

裁判所によっては戸籍の有効期間(概ね3~6ヶ月以内かと思われます)が設けられていますので事前に確認してください。

申述人が相続人であることを証明する戸籍謄本

ここは少々難解なポイントです。

申述人の最新の戸籍とは別に、その申述人が相続人であることを証明するための戸籍が必要となりますが、立場の違いにより必要な戸籍が異なります。

【申述人が配偶者の場合】

申述人が配偶者の場合は、被相続人の最終の戸籍に一緒に記載されているのでそれで足ります。

【申述人が被相続人の子の場合】

申述人が被相続人の未婚の子の場合は、被相続人の最終の戸籍に一緒に記載されているのでそれで足ります。

対して、既婚や分籍など被相続人の戸籍から抜けている場合は、同じ戸籍に入っていた(=親子関係が分かる)戸籍が別途必要となります。

【申述人が被相続人の孫の場合】

申述人が被相続人の孫の場合、つまり代襲相続が発生している場合は、被代襲者(被相続人の子)が先に死去していることを証明するために、次の戸籍が必要です。

  • 被相続人と被代襲者の親子関係が分かる戸籍
  • 被代襲者の死去の記載のある最後の戸籍
  • 被代襲者と代襲相続人(被相続人の孫)の親子関係の分かる戸籍

【申述人が被相続人の直系尊属の場合】

申述人が被相続人の父母や祖父母などの直系尊属の場合は、先順位の相続人(子や代襲相続人たる孫など)がいないことを証明するために、次の戸籍が必要です。

  • 被相続人の死去から出生まで遡る戸籍
  • 被相続人の子で死去した方がいる場合、その子の死去から出生まで遡る戸籍
  • 申述人が祖父母の場合、父母の死去の記載のある戸籍

【申述人が被相続人の兄弟姉妹の場合】

申述人が被相続人の兄や妹などの兄弟姉妹の場合は、先順位の相続人(子や代襲相続人たる孫、父母など)がいないことを証明するために、次の戸籍が必要です。

  • 被相続人の死去から出生まで遡る戸籍
  • 被相続人の子で死去した方がいる場合、その子の死去から出生まで遡る戸籍
  • 父母の死去の記載のある戸籍(場合によっては祖父母の死去の記載のある戸籍も)

【申述人が被相続人の甥・姪の場合】

申述人が被相続人の甥・姪の場合、つまり代襲相続が発生している場合は、①先順位の相続人(子や代襲相続人たる孫、父母など)がいないこと、②被代襲者(被相続人の兄弟姉妹)が先に死去していることを証明するために、次の戸籍が必要です。

  • 被相続人の死去から出生まで遡る戸籍
  • 被相続人の子で死去した方がいる場合、その子の死去から出生まで遡る戸籍
  • 父母の死去の記載のある戸籍(場合によっては祖父母の死去の記載のある戸籍も)
  • 被代襲者の死去の記載のある最後の戸籍
  • 被代襲者と代襲相続人(被相続人の甥・姪)の親子関係の分かる戸籍
収入印紙800円分(申述人1人につき)

相続放棄申述の手数料です。

収入印紙は申述書の所定の欄に貼り付けます。消印をしてはいけません。

連絡用の郵便切手

必要な郵便切手の種類は申述先の家庭裁判所によって異なりますので、事前に確認していただくか、各裁判所のウェブサイト内にある「裁判手続を利用する方へ」を探してみてください。(外部リンク:各裁判所のウェブサイト)

 

流れ

相続放棄の流れは概ね次のとおりです。

(1)申述書・必要書類の提出

管轄の家庭裁判所に申述書と必要書類を提出します。窓口に持参しても郵送でもどちらでも構いません。

(2)書類の精査

裁判所にて提出された書類を精査します。不備や不足があればこの段階で問い合わせが来ます。

(3)照会書の発送

書類の精査が済むと、裁判所から申述人に対して「照会書」という手紙が発送されます。

相続放棄の申述書には実印の押印が求められておらず、印鑑登録証明書の提出も必要ありません。

やろうと思えばなりすましで相続放棄の申述をすることが可能なのです。恐ろしいですね。

この照会書によって、相続放棄の申述が相続人自らの意思でなされたものかを確認します。

(4)回答書の記入、返送

照会書に対する「回答書」を記入します。

回答書の記入事項は申述書に記入した内容とほぼ変わりありませんので、困ることはないでしょう。書き方で分からないことがあれば裁判所の担当者に問い合わせれば教えてくれます。

照会書への記入が済んだら裁判所へきちんと返送しましょう。

(5)相続放棄の申述受理

しばらくしますと、裁判所から「相続放棄申述受理通知書」が届きます。

これで晴れて手続き完了となります。

 

相続放棄申述受理証明書

上記の相続放棄申述受理通知書は、通知であって証明書ではありません。

相続放棄したことを証明したい場合は、別途「相続放棄申述受理証明書」を取得する必要があります。

 

証明書を取得できる人

相続放棄申述受理証明書を取得できる人は限られています。

  1. 申述人本人
  2. 被相続人の他の相続人
  3. 被相続人の債権者 など

上記BやCは、相続放棄者がいることによって自身の相続分や債権の帰属に影響がある、いわゆる利害関係人です。

 

取得方法

相続放棄の申述をした家庭裁判所に申請します。

裁判所の窓口に出向いて取得する方法のほか、郵送で取得することも可能です。

【窓口で取得する場合】

窓口で取得する場合は、次の書類などを持参し、窓口で申請書を記入して提出します。

相続放棄申述受理通知書

事件番号の記入欄がありますので通知書を持参しましょう。

証明書の必要通数分の収入印紙

証明書1通につき150円の収入印紙が必要です。

事前に用意していくか、裁判所の売店で購入しましょう。

運転免許証や保険証などの身分証明書

窓口で提示します。

認印(三文判)

押印欄があるので、印鑑を持参しましょう。

利害関係の疎明資料

証明書の申請者が利害関係人の場合は、上記書類のほか、利害関係を疎明する必要があります。

被相続人の他の相続人の場合は、相続関係が分かる戸籍などが必要となります。詳しくは管轄の家庭裁判所にお問い合わせください。

 

【郵送で取得する場合】

郵送で取得する場合は、次の書類を管轄の家庭裁判所へ郵送します。

交付申請書

相続放棄申述受理証明書の交付申請書に必要事項を記入します。

この交付申請書、裁判所によって書式がまちまちなので、管轄の裁判所の書式を使用するようにしましょう。

申請書は「相続放棄申述受理証明書 交付申請書 〇〇県」などでネット検索すればヒットするかと思います。あるいは各裁判所のウェブサイトをお探しください。(外部リンク:各裁判所のウェブサイト)

証明書の必要通数分の収入印紙

証明書1通につき150円の収入印紙が必要です。

収入印紙は交付申請書に貼り付けましょう。消印をしてはいけません。

返信用の封筒

交付申請書に記入した住所と同じ住所を記入した封筒を用意しましょう。封筒に切手を貼り忘れないようにご注意ください。

重量オーバーで裁判所に差し戻されてしまわないよう、封筒のおもて面に赤字で「不足料金受取人払い」と記入しておくと良いです。

運転免許証や保険証などの身分証明書のコピー

なぜか郵送では不要な裁判所もありますが、入れておいた方が無難でしょう。

利害関係の疎明資料のコピー

証明書の申請者が利害関係人の場合は、上記書類のほか、利害関係を疎明する必要があります。

被相続人の他の相続人の場合は、相続関係が分かる戸籍などが必要となります。詳しくは管轄の家庭裁判所にお問い合わせください。

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限定承認

限定承認とは、相続人が相続によって得た財産の限度で被相続人の債務の負担を受け継ぐ(=相続財産を超える債務の支払いを免れる)制度です。

プラスの財産(不動産や現金、預貯金など)もマイナスの財産(ローンや負債など)もいっさいがっさい全て受け継がない相続放棄に対し、限定承認は「プラスの財産が多ければ余った分貰えるし、マイナスの財産が多ければ足が出た分は払わなくてよい」という、夢のような制度なのです。

しかしながら、この制度は思ったほど利用されていないのが実情です。

限定承認のメリットとデメリットをご覧いただいて、利用を検討すべきか否か判断しましょう。

 

なお、本稿では限定承認の手続き自体は説明しません。

限定承認は高度な法律知識を要するものですし、債権者などの相手方のいることですから、ご自身で調べながら手続きを進めるのは得策ではないと考えます。

限定承認のやり方を調べていて3ヶ月の熟慮期間を過ぎてしまっては本末転倒です。

「限定承認を検討してみようかな」と思ったら、迷わず弁護士や司法書士に相談することをおすすめします。

それでもご自身で手続きしたい気骨のある方はこちら。(外部リンク:相続の限定承認の申述)

 

限定承認の熟慮期間

限定承認は、相続放棄と同じく、原則として自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内に家庭裁判所に申述(限定承認します、との書類を提出すること)しなければなりません。

 

限定承認のメリット

相続財産の限度で被相続人の債務を負担すればよい。

限定承認すると、被相続人の債務を支払う義務が相続財産の範囲に限定されます。

「判明していない債務が有りそうだけど、金額が分からない。」といった場合に、万が一相続人が払えるレベルを超えた債務が有ったとしても、相続財産の金額の範囲を超過した債務は支払い義務を免れることができます。

どうしても手元に残したい財産がある場合、その財産を残せる可能性がある。

限定承認をした場合、被相続人の財産は全て、債権者に弁済可能な形、つまり現金化しなければならないのが原則です。不動産であれば、売却(競売)して現金化しなければなりません。

しかし、限定承認をした人(限定承認者)には「相続財産を優先的に買い取ることができる権利=先買権」というものが認められています。

(弁済のための相続財産の換価)
第932条 前三条の規定に従って弁済をするにつき相続財産を売却する必要があるときは、限定承認者は、これを競売に付さなければならない。ただし、家庭裁判所が選任した鑑定人の評価に従い相続財産の全部又は一部の価額を弁済して、その競売を止めることができる

この先買権の行使により、残しておきたい財産(例えば自宅不動産など)を手放さなくて済む可能性があります。

他の親族に迷惑をかけなくて済む。

相続放棄をすると、次順位の相続人に相続権が移ります。

例えば、配偶者と子がいる方が亡くなって、配偶者と子が共に相続放棄をすると、次順位の直系尊属(父母や祖父母)に相続権が移ることになります。直系尊属が相続放棄をすると、さらに次順位の兄弟姉妹に相続権が移り、兄弟姉妹が相続放棄をすることによって、ようやく相続人がゼロになります。

結局、一族全員が債務を免れるためには、相続人となる方全員が相続放棄の手続きをする必要がありますので、大なり小なり親族に手間を掛けさせてしまうことになります。

一方、限定承認によれば、相続権が移ることはありませんので、他の親族に迷惑をかけなくて済みます。(債権者の中に親族がいたら違った意味で迷惑が掛かりますが・・・)

 

限定承認のデメリット

上記のような多大なるメリットがありながら限定承認があまり利用されない理由は次のようなデメリットがあるためです。

限定承認は相続人全員でしなければならない。

限定承認は相続人全員で選択しなければいけません。一方は限定承認、他方は単純承認、というわけにはいかないのです。

相続人が複数いる場合、非協力的な相続人がいると、そもそも限定承認の手続きができない可能性があります。

なお、複数相続人のうちの一部が相続放棄をすることは可能です。相続放棄をすると初めから相続人でなかったものとされるためです。(ちなみに、配偶者だけを残して子が相続放棄すると、次順位の相続人に相続権が移ってしまうので要注意。)

手続きそのものが煩雑。

限定承認があまり利用されないのはこれに尽きるのではないでしょうか。

申述書のほかに相続財産の目録を提出しなければならないため、事前の調査を3ヶ月で行う必要があります。

ようやく申述にこぎつけ無事に受理されたとしても、その後は債権者への公告(官報という政府発行の新聞のようなものに「債権者さん出ておいで」と載せること)や個別の催告、各財産の換価のための競売や各債権者の弁済など、やることが山ほどあります。

先買権を行使して大切な財産を守る場合は、裁判所に鑑定人の選任を申し立てる必要がありますし、お金の工面もしなければなりません。

この手続きの煩雑さが大きな障害となっているのではないでしょうか。

被相続人にみなし譲渡所得税が課税される可能性がある。準確定申告をしなければならない。

こちらは税務上のデメリットです。

限定承認をすると、相続開始時の“時価”で被相続人から相続人に対して相続財産の譲渡があったものとみなされ、譲渡益が出る場合には被相続人に譲渡所得税が課されます。これを「みなし譲渡所得税」といいます。

例えば、先代が安価で購入した田畑をアパマンの敷地に宅地造成していたような場合、譲渡する際の時価は明らかに値上がりしているはずです。この場合の譲渡益に対して税金が掛かってしまうわけです。

これの何が問題なのかと言うと、マイナスの財産がいくらか分からず限定承認を選択したものの、結果的にプラスの財産が上回っていた場合に税金分損をしてしまうということです。

しかも、被相続人の死去から4ヶ月以内に準確定申告をしなければなりません。限定承認の熟慮期間が3ヶ月ですから、かなりシビアなタイムスケジュールと言えるでしょう。

なお、「プラスの財産<マイナスの財産」の場合は、限定承認により支払い義務を免れることができますので問題は生じません。

税務上の観点からも限定承認をすべきか否か、慎重に検討すべきということです。

 

限定承認を検討すべき場面

結局、限定承認はよほどの理由がない限りは安易に選択すべき制度ではなさそうです。

しかしながら、相続放棄では得られないメリットがあります。

どうしても手放したくない財産があるときは、限定承認を検討しましょう。

限定承認をすべきか否か、多少でも検討の余地がある場合は、弁護士や司法書士(ときには税理士も)などの専門家に相談しましょう。

Point

  • 限定承認を選択するか否かは慎重な検討を要する。
  • 限定承認の検討の余地があるなら迷わず専門家に相談する。

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相続放棄・承認の期間伸長

相続放棄、限定承認は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内に家庭裁判所に申述しなければならないのが原則です。

しかしながら、3ヶ月では財産の調査が完了せず、相続放棄をするか限定承認をするか、はたまた単純承認でよいか、判断できない場合もあります。

そのようなときに、とりあえず相続放棄・限定承認の熟慮期間を伸ばしてもらう手続きを「相続放棄・承認の期間伸長」といいます。

 

期間伸長の方法

相続放棄・承認の期間伸長の手続きは、相続放棄の手続きとほぼ同じです。

 

申立先(書類提出先)

被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に申し立てます。⇒裁判所の管轄を調べる

 

必要書類

申立の際の必要書類等は次のとおりです。各書類の具体的な内容は相続放棄の必要書類をご覧ください。

期間伸長の申立書

申立書の書式や記載例は裁判所ホームページにありますので、印刷してご利用ください。(外部リンク:相続の承認又は放棄の期間の伸長の申立書

被相続人の住民票除票または戸籍の附票
被相続人の最終の戸籍謄本
申述人の戸籍謄本
申述人が相続人であることを証明する戸籍謄本
収入印紙800円分(申立人1人につき)
連絡用の郵便切手

必要な郵便切手の種類は申立先の家庭裁判所によって異なりますので、事前に確認していただくか、各裁判所のウェブサイト内にある「裁判手続を利用する方へ」を探してみてください。(外部リンク:各裁判所のウェブサイト)

 

期間伸長の注意点

相続放棄・承認の熟慮期間の伸長は、熟慮期間内に相続財産の調査が完了しない人を救済するための手続きです。

そのため、期間を伸ばしてもらうためにはある程度しっかりとした理由が必要ですし、不相当に期間を伸ばしてもらうこともできません。一度の申し立てで伸長できるのは通常3ヶ月くらいでしょう。

期間伸長してもなお時間が足りなければ、さらに期間伸長の申し立てをすべしというのが裁判所の見解です。ただし、2回目以降の期間伸長は理由の有無がさらに厳しくなります。

期間伸長の手続きがあるからといって、慢心は厳禁ということでしょう。

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単純承認

単純承認とは、プラスの財産(不動産や現金、預貯金など)もマイナスの財産(ローンや負債など)も、いっさいがっさい全て相続することです。

つまり、相続放棄や限定承認を“しない”ということ。

なぜ、“何もしない”ことに名前が付いているのかというと、相続放棄や限定承認がしたくてもできなくなる「法定単純承認」という制度があるからです。

 

「法定単純承認」に注意

法律上「コレをやったら単純承認したものとみなしますよ。相続放棄や限定承認はさせませんよ。」というものが定められており、これを「法定単純承認」といいます。相続における大きな落とし穴です。

法定単純承認に該当する事由には次のようなものがあります。

(法定単純承認)
第921条 次に掲げる場合には、相続人は、単純承認をしたものとみなす。
一 相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき。ただし、保存行為及び第602条に定める期間を超えない賃貸をすることは、この限りでない。
二 相続人が第915条第1項の期間内に限定承認又は相続の放棄をしなかったとき。
三 相続人が、限定承認又は相続の放棄をした後であっても、相続財産の全部若しくは一部を隠匿し、私にこれを消費し、又は悪意でこれを相続財産の目録中に記載しなかったとき。ただし、その相続人が相続の放棄をしたことによって相続人となった者が相続の承認をした後は、この限りでない。

つまり、相続人が被相続人の財産を処分(使用、売却、賃貸、質入れ、廃棄など)すると、もはや相続放棄などができなくなるということです。

  • 葬儀費用を被相続人の預貯金から用立てる。
  • 被相続人名義の車を邪魔だからといって廃車にしたり売却したりする。
  • 遺品を整理していて、価値がないだろうと遺品を捨ててしまう。

上記のような有りがちな行為も法定単純承認の規定に引っ掛かってきますので要注意です。

なお、この規定は債権者保護のためのものですから、悪気なく上記のようなことをしてしまっても、債権者が何も言ってこなければ問題にならないこともあります。(裁判所がダメと言えばダメですが・・・)

しかし、是が非でも債権を回収したい債権者がいる場合、たとえ相続放棄や限定承認が受理されていても裁判で法定単純承認を主張してくる可能性があります。

相続放棄や限定承認をお考えの方は、被相続人の財産にはなるべく触らず、財産の管理のみ行うのがよいでしょう。

ちなみに、相続財産を隠して相続放棄や限定承認をするのは論外です。当たり前ですが。

Point

  • 相続放棄や限定承認をお考えの方は、法定単純承認に特に注意を要する。

 

次は相続財産を取得する人の決定方法について見ていきましょう。

相続の発生から相続登記までの流れを確認したい方はこちら。

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