ここでは戸籍や住民票などの取得方法について見ていきましょう。
相続人となる人のだいたいの目星を付けたところで、いざ戸籍・住民票などを取得していきましょう。
目次
戸籍の取得
戸籍は、登記申請の際の添付書類となります。
また、法務局への提出のためだけでなく、相続人の特定のために必ず確認すべき書類ですので、頑張って取得しましょう。
戸籍の取得方法
戸籍は本籍地の市区町村の役所・役場で取得できます。住所地ではない点に注意。
窓口で発行してもらう方法と郵送で発行してもらう方法があります。
窓口で発行してもらう場合は、運転免許証などの身分証明書と発行手数料分の現金、場合によってはご自身が相続人であることを証明する戸籍などが必要です。
また、ご自身の兄弟姉妹など、通常は委任状がなければ取得できない戸籍を取得したい場合も、相続登記のためなど正当な理由があれば取得することが可能です。これ、意外と知らない人が多いです。
通常は取得できない他の相続人の戸籍を取得したい場合は、ご自身の立場を明らかにするため(例えば、ご自身が相続人であることを証明するため)の戸籍なども併せて必要となります。
戸籍は高度な個人情報が含まれていますので、取得できる人と取得できる場合が決められています。詳しくは各役所のホームページをご覧いただくか電話でお問い合わせください。
郵送で発行してもらう場合は、上記書類(コピーで足ります)のほか、手数料分の定額小為替と返信用の封筒が必要です。
定額小為替とは、額面が決まっている小為替のことで、郵便局で購入することができます。1枚発行してもらう毎に200円の発行手数料が掛かります。
戸籍の発行手数料は現在有効なものは450円、改製や除籍によって閉じられたものは750円の役所・役場が多いので、その券種を数枚ずつ購入しておけばまず間違いありませんが、上記のとおり1枚ずつ手数料が掛かってしまいます。
定額小為替の最高額は1,000円なので、1,000円を数枚購入して同封する手もあります。なお、役所・役場は定額小為替のお釣りが出ることを大変嫌がりますので、クレーム覚悟でお試しください。
戸籍の名称と特徴
各戸籍の名称とその特徴は次のとおりです。
戸籍謄本(戸籍記載事項証明書)
現在、ほとんどの役所・役場で戸籍がコンピュータ化されています。ここでいう戸籍謄本(戸籍記載事項証明書)は、コンピュータ化以降の戸籍だと思ってください。
改製原戸籍謄本
改製原戸籍謄本とは、コンピュータ化される前に使用されていた戸籍のことです。謄本1ページ目の右上辺りに「改製原」と記載されています。
改製原戸籍は法律で決まったタイミングでコンピュータ化の作業をしていますので、改製時期はどの人もだいたい同じです。
除籍謄本
除籍謄本とは、死亡や転籍(本籍を移すこと)によって、その戸籍に記載されている全員がその戸籍から抜けてしまったために使わなくなった戸籍のことです。
コンピュータ化以降の物だと、全員の名前の下に「除籍」と記載されていたり、最終ページの証明文のところに「これは除かれた戸籍の謄本である」などと記載されています。コンピュータ化以前の物だと、謄本1ページ目の右上辺りに「除籍」と記載されているか、謄本自体に大きく×が付けられています。
除籍謄本は、戸籍の筆頭者が転籍を繰り返すたびに増えていきますので、人によって通数はまちまちです。
必要な戸籍
相続登記の際に必要となる一般的な戸籍の種類は次のとおりです。重複する戸籍は1通で足ります。
なお、必要な戸籍が廃棄や焼失などで取得できない場合はこちらをご覧ください。⇒戸籍謄本が出生まで遡れない
配偶者と子、または子のみが相続人の場合
配偶者と子、または子のみが相続人の場合の必要な戸籍は次のとおりです。
被相続人の死去から出生まで遡る戸籍謄本(戸籍記載事項証明書)、改製原戸籍謄本、除籍謄本
相続人を特定するために、その戸籍の全員が記載された「謄本」(全部証明書)を取得しましょう。被相続人だけが抜き出された「抄本」(一部証明書)では足りません。
被相続人の戸籍を出生まで遡ることによって、配偶者がいること(または先に死去していたり離婚していること)と子がいることを確認します。
相続人の最新の戸籍謄本(または抄本)
相続人の最新の戸籍は「謄本」(全部証明書)でも「抄本」(一部証明書)でもどちらでも構いません。
相続人の最新の戸籍によって、配偶者と子(配偶者が先に死去していたり離婚しているときは子のみ)が存命であることを確認します。
なお、相続登記にあたり戸籍謄抄本に有効期限はありませんが、相続人の最新の戸籍については、必ず被相続人の死去後に発行されたものを用意してください。
被相続人の子に代襲相続が発生している場合
被相続人の子に代襲相続が発生している場合の必要な戸籍は次のとおりです。
被相続人の死去から出生まで遡る戸籍謄本、改製原戸籍謄本、除籍謄本
被相続人の戸籍を出生まで遡ることによって、配偶者がいること(または先に死去していたり離婚していること)と子がいることを確認します。
被代襲者の死去から出生まで遡る戸籍謄本、改製原戸籍謄本、除籍謄本
被代襲者(被相続人よりも先に死去した子)の戸籍を出生まで遡ることによって、代襲相続人(被代襲者の子。被相続人の孫)がいることを確認します。
(代襲)相続人の最新の戸籍謄本(または抄本)
(代襲)相続人の最新の戸籍によって、配偶者と孫(配偶者が先に死去していたり離婚しているときは孫のみ)が存命であることを確認します。
配偶者と直系尊属、または直系尊属のみが相続人の場合
配偶者と直系尊属、または直系尊属のみが相続人の場合の必要な戸籍は次のとおりです。
被相続人の死去から出生まで遡る戸籍謄本、改製原戸籍謄本、除籍謄本
被相続人の戸籍を出生まで遡ることによって、配偶者がいること(またはいないこと)と子がいないことを確認します。
相続人の最新の戸籍謄本(または抄本)
相続人の最新の戸籍によって、配偶者と直系尊属(配偶者がいないときは直系尊属のみ)が存命であることを確認します。
なお、存命の直系尊属が祖父母の場合は、父母と祖父母の親子関係が分かる戸籍謄本なども必要となる可能性があります。
配偶者と兄弟姉妹、または兄弟姉妹のみが相続人の場合
配偶者と兄弟姉妹、または兄弟姉妹のみが相続人の場合の必要な戸籍は次のとおりです。
被相続人の死去から出生まで遡る戸籍謄本、改製原戸籍謄本、除籍謄本
被相続人の戸籍を出生まで遡ることによって、配偶者がいること(またはいないこと)と子がいないことを確認します。
父母両名の死去から出生まで遡る戸籍謄本、改製原戸籍謄本、除籍謄本
父母両名の戸籍を出生まで遡ることによって、父母が被相続人よりも先に死去していることと被相続人に兄弟姉妹がいることを確認します。
なお、祖父母以前の直系尊属全員が被相続人よりも先に死去していることを確認するため、祖父母以前の直系尊属の死去の日付が分かる戸籍が必要となる可能性があります。
ただし、直系尊属が生きているとすれば現在の日本最高齢者よりも長寿となるような場合は、戸籍謄本の添付を省略しても問題ないとされています(登記官によっては100歳を超えていれば良いという方もいます。)。
相続人の最新の戸籍謄本(または抄本)
相続人の最新の戸籍によって、配偶者と兄弟姉妹(配偶者がいないときは兄弟姉妹のみ)が存命であることを確認します。
被相続人の兄弟姉妹に代襲相続が発生している場合
被相続人の兄弟姉妹に代襲相続が発生している場合の必要な戸籍は次のとおりです。
被相続人の死去から出生まで遡る戸籍謄本、改製原戸籍謄本、除籍謄本
被相続人の戸籍を出生まで遡ることによって、配偶者がいること(またはいないこと)と子がいないことを確認します。
父母両名の死去から出生まで遡る戸籍謄本、改製原戸籍謄本、除籍謄本
父母両名の戸籍を出生まで遡ることによって、父母が被相続人よりも先に死去していることと被相続人に兄弟姉妹がいることを確認します。
なお、祖父母以前の直系尊属全員が被相続人よりも先に死去していることを確認するため、祖父母以前の直系尊属の死去の日付が分かる戸籍が必要となる可能性があります。
被代襲者(被相続人の死去前に死去した兄弟姉妹)の死去から出生まで遡る戸籍謄本、改製原戸籍謄本、除籍謄本
被代襲者(被相続人よりも先に死去した兄弟姉妹)の戸籍を出生まで遡ることによって、代襲相続人(被代襲者の子。被相続人の甥・姪)がいることを確認します。
(代襲)相続人の最新の戸籍謄本(または抄本)
(代襲)相続人の最新の戸籍によって、配偶者と甥・姪(配偶者が先に死去していたり離婚しているときは甥・姪のみ)が存命であることを確認します。
住民票の取得
住民票は、登記申請の際の添付書類となりますので、戸籍と併せて取得しましょう。
住民票の取得方法
住民票は住所地の市区町村の役所・役場で取得でき、窓口で発行してもらう方法と郵送で発行してもらう方法があります。
窓口で発行してもらう場合は、運転免許証などの身分証明書と発行手数料分の現金、場合によってはご自身が相続人であることを証明する戸籍などが必要です。
住民票の発行手数料は役所・役場によって違いますが、概ね300円のところが多いです。
郵送で発行してもらう場合は、上記書類(コピーで足ります)のほか、手数料分の定額小為替(定額小為替についてはこちら)と返信用の封筒が必要です。
住民票は高度な個人情報が含まれていますので、取得できる人と取得できる場合が決められています。詳しくは各役所のホームページをご覧いただくか電話でお問い合わせください。
必要な住民票
相続登記の際に必要となる住民票の種類は次のとおりです。
なお、必要な住民票が廃棄などで取得できない場合はこちらをご覧ください。⇒登記簿と戸籍謄本を繋げる住民票や戸籍の附票が廃棄されている
被相続人の住民票除票
ある人が死去すると現在有効な住民票からは除かれ、「除票」という名称で一定期間(概ね5年(令和元年6月20日より150年間))各役所・役場で保管されます。
被相続人の住民票除票は、戸籍に記載された被相続人と登記簿に記載された所有者が同一人であることを証明するために、本籍が記載されたものを取得してください。
住民票に本籍を記載してもらいたい場合は、住民票の請求用紙に「本籍を記載する」旨のチェック欄がありますので、そちらにチェックを入れます。
不動産を取得する相続人の住民票
不動産を取得する相続人のみ住民票が必要となります。相続人全員分は必要ありません。
住民票に記載された不動産を取得する人と戸籍上の相続人が同一人であることを証明するために、本籍が記載されたものを用意します(本籍が記載されていなくても問題ない場合もありますが、本籍記載のものを取得した方が無難です)。
なお、相続登記にあたり住民票に有効期限はありませんが、相続人の住民票については、必ず被相続人の死去後に発行されたものを用意してください。
戸籍の附票の取得
戸籍の附票は、戸籍と紐付けられた住所を証明する書類です。
効用は住民票と同じですが、住民票は現住所と前住所のみ記載されるのに対し、戸籍の附票は本籍を変更しない限り住所移転の履歴が記載され続けるのが特徴です。
住民票の代わりに戸籍の附票を取得しても構いません。
戸籍の附票の取得方法
戸籍の附票は本籍地の市区町村の役所・役場で取得できます。住所地ではない点に注意。
窓口で発行してもらう方法と郵送で発行してもらう方法があります。
窓口で発行してもらう場合は、運転免許証などの身分証明書と発行手数料分の現金、場合によってはご自身が相続人であることを証明する戸籍などが必要です。
戸籍の附票の発行手数料は役所・役場によって違いますが、概ね300円のところが多いです。
郵送で発行してもらう場合は、上記書類(コピーで足ります)のほか、手数料分の定額小為替(定額小為替についてはこちら)と返信用の封筒が必要です。
戸籍の附票は高度な個人情報が含まれていますので、取得できる人と取得できる場合が決められています。詳しくは各役所のホームページをご覧いただくか電話でお問い合わせください。
必要な戸籍の附票
相続登記の際に必要となる戸籍の附票の種類は次のとおりです。
なお、必要な戸籍の附票が廃棄などで取得できない場合はこちらをご覧ください。⇒登記簿と戸籍謄本を繋げる住民票や戸籍の附票が廃棄されている
被相続人の除かれた戸籍の附票(除票)
被相続人の欄には「除籍」と記載されています。
被相続人が死去したことにより、戸籍内に誰もいなくなれば附票そのものが除票となり、戸籍内に誰かが残っていれば現在も引き続き有効な戸籍の附票となります。
戸籍の附票の除票は一定期間(概ね5年(令和元年6月20日より150年間))各役所・役場で保管されます。
被相続人の戸籍の附票は、戸籍に記載された被相続人と登記簿に記載された所有者が同一人であることを証明するために、本籍が記載されたものを取得してください。
不動産を取得する相続人の戸籍の附票
不動産を取得する相続人のみ必要となります。相続人全員分は必要ありません。
不動産を取得する相続人の戸籍の附票は、不動産を取得する人と戸籍上の相続人が同一人であることを証明するために、本籍が記載されたものを用意します(本籍が記載されていなくても問題ない場合もありますが、本籍記載のものを取得した方が無難です)。
なお、相続登記にあたり戸籍の附票に有効期限はありませんが、相続人の戸籍の附票については、必ず被相続人の死去後に発行されたものを用意してください。
次は相続放棄や限定承認などについて見ていきましょう。
相続の発生から相続登記までの流れを確認したい方はこちら。
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