ここでは遺産分割調停・審判によって取得者を決めた場合の登記申請書類の作成について見ていきましょう。
遺産分割協議による登記と比べると、添付書類に違いがあります。
目次
登記申請書記載例
遺産分割調停・審判によって相続不動産の取得者を決めた場合の登記申請書の記載例は以下のとおりです。各項目をクリックすると該当箇所にジャンプします。
登記申請書
登記の目的 所有権移転
原 因 令和〇年〇月〇日相続
相 続 人 (被相続人 甲田A男)
〇〇県〇〇市〇〇一丁目1番1号
甲田B子 (印)
電話番号 01-2345-6789
添付書類
登記原因証明情報
住所証明情報
評価証明情報
課税価格 金1,500万円
登録免許税 金6万円
不動産の表示
所在 〇〇県〇〇市〇〇一丁目
地番 1番1
地目 宅地
地積 200.00㎡
不動産価格 金1,000万円
所在 〇〇県〇〇市〇〇一丁目1番地1
家屋番号 1番1
種類 居宅
構造 木造かわらぶき2階建
床面積 1階 50.00㎡
2階 50.00㎡
不動産価格 金500万円
※登記申請書類の組み方については、別ページで解説しています。⇒登記申請書類の組み方
解説
相続関係(前提)
亡くなったのは甲田A男さん。
A男さんには、配偶者の甲田B子さんと長男の甲田C助さん、長女の乙成D美さんがおり、皆さん単純承認しています。
甲田C助さんと乙成D美さんが大変不仲で、遺産分割協議がまとまらず、致し方なく家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てました。結果、調停が成立し甲田B子さんが相続不動産の取得者となりました、というシチュエーションです。
登記申請書
上記の登記申請書の各項目について解説していきます。
登記の目的
単独で所有している不動産を移転する場合は「所有権移転」と記載します。
なお、共有持分を移転する場合は「〇〇持分全部移転」と記載します。〇〇は被相続人の氏名です。⇒不動産の共有持分を相続したとき
原因
登記原因とその日付を記載します。遺産分割の効果は相続開始に遡るとされていますので、登記原因は「相続」、日付は被相続人の死去の日を和暦で記載します。
申請人
「相続人」として遺産分割調停・審判によって相続不動産を取得した方の住所と氏名を記載します。
住所と氏名は住民票通りに記載しましょう。ただし、「〇丁目」の〇は漢数字で表記してください。
申請人自身で登記申請を行う場合は、申請人が自分の名前の横に押印します。
なお、印鑑は認印で構いませんが、登記完了後に窓口で書類を受けとる際に同じ印鑑が必要になりますのでご注意ください。
代理人が登記申請を行う際の記載方法はこちら。⇒代理人が登記申請する場合
添付書類
添付書類の内訳は以下のとおりです。
登記原因証明情報
遺産分割調停・審判によって相続不動産の取得者を決めた場合の登記には、登記原因証明情報として以下の書類が必要です。
(1)被相続人の住民票除票または戸籍の附票
登記簿上の所有者と被相続人が同一人であることを証明するために、被相続人の住民票除票または戸籍の附票を提出します。住民票除票・戸籍の附票のどちらも、本籍が記載されたものを取得しましょう。⇒必要な住民票、必要な戸籍の附票
(2)遺産分割調停調書または審判書
遺産分割調停や審判によって取得者が決まったことを証明するために遺産分割調停調書や審判書を提出します。調停調書や審判書はどちらも謄本で足ります。
遺産分割審判によって取得者が決まった場合は、裁判所で確定証明書を発行してもらう必要があります。
なお、遺産分割協議による相続登記と違い、遺産分割調停・審判によって相続登記をする場合、相続人を証明するための戸籍謄本一式は不要です。
遺産分割調停の申立の際に、家庭裁判所に戸籍謄本一式を提出して相続人を確定しているため、登記手続きのときにまで添付を求める必要が無いという趣旨によるものです。
住所証明情報
住所証明情報として、不動産を取得する相続人の住民票または戸籍の附票を提出します。
不動産を取得する人と戸籍上の相続人が同一人であることを証明するために、本籍が記載されたものを取得しましょう。⇒必要な住民票、必要な戸籍の附票
評価証明情報
評価証明情報として、固定資産評価証明書などを提出します。
固定資産評価証明書を取得する場合の注意点などはこちらをご覧ください。⇒固定資産評価証明書
登記申請日付・管轄法務局
登記申請する日を記入します。郵送する場合は発送日を記載しておけば問題ないでしょう。
法務局の項目には、不動産所在地を管轄する(登記申請書を提出する)法務局の名前を記載します。⇒法務局の管轄を調べる
課税価格・登録免許税
課税価格には、該当年度(その年の4月1日から翌年3月31日まで)の固定資産評価額の合計金額(1,000円未満の端数切り捨て。合計金額が1,000円に満たないときは1,000円。)を記載します。
例えば、不動産2物件の合計金額が15,000,258円の場合、課税価格は1,500万円です。
なお、固定資産税が非課税(=固定資産評価額が無い)不動産を登記するときは、公衆用道路の場合は「近傍宅地価格」を、その他の非課税の不動産の場合は「類似価格」を、それぞれ認定してもらう作業が発生します。
非課税の不動産の課税価格の計算方法については、こちらをご覧ください。⇒非課税の不動産の課税価格の計算
登録免許税には、上記により算出した課税価格に一定の税率を掛けて算出した金額(100円未満の端数切り捨て。1,000円に満たないときは1,000円。)を記載します。
相続による所有権移転登記の税率は【0.4%】です。
例えば、課税価格が1,500万円のときの登録免許税は、1,500万円×0.4%=6万円となります。
なお、時限立法ではありますが、登録免許税の免税が認められる場合があります。詳しくはこちらをご覧ください。⇒相続登記の登録免許税の免税措置
不動産の表示
不動産の表示の項目には、土地であれば「所在・地番・地目・地積」を、一般的な建物であれば「所在・家屋番号・種類・構造・床面積」を、それぞれ登記簿謄本(登記事項証明書)のとおり記載します。⇒登記簿謄本(登記事項証明書)の取得
各不動産の不動産価格は、該当年度の固定資産評価額を記載しましょう。
マンションなどの区分建物の場合は書き方が特殊です。⇒マンションの「不動産の表示」の記載方法
参考(法務局ホームページ)
法務局ホームページにも記載例があります。(外部リンク:登記申請書の様式及び記載例)
併せてご確認いただき、不備の無い申請書を作成しましょう。
登記申請書が作成できたら、次は登記申請の方法について見ていきましょう。
相続の発生から相続登記までの流れを確認したい方はこちら。
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