ここでは「住所変更登記」に関する登記申請書類の作成について見ていきましょう。
住所変更登記をすべきか住所更正登記をすべきかの判断基準については、『変更か更正かを判断するための登記簿の読み方』をご覧ください。
目次
住所変更登記とは?
住所変更登記とは、登記記録上の所有者の住所が登記後の事後的要因により現在の住所と相違している場合におこなう登記です。
事後的に住所が相違する原因としては以下のようなものがあります。
- 引っ越しなどによる住所移転
- 市町村役場による住居表示実施
- 市町村合併などによる町名や地番の変更 など
住所変更登記が不要な場合がある
住所が変わっていても、その変更登記をしなくてよい場合があります。
市町村合併などにより市町村名のみが変わった場合、行政区画の変更はいわゆる「公知の事実」として変更登記をする必要はないとされています。(行政区画変更、市制施行、区制施行、町名変更など)
例えば、『〇〇県△△郡□□町☆☆1000番地』という住所が市制施行により『〇〇県◇◇市☆☆1000番地』に変わったような場合は住所変更登記不要です。
ポイントは住所の末尾が変わっていないことです。
ただし、登記簿上の住所から住所移転したにもかかわらず住所変更登記をせずにいたところ、その後行政区画の変更があった場合には、変更登記をしなければなりません。
詳しくは、『登記名義人表示変更登記の「登記の目的・登記原因・登録免許税」まとめ』をご覧ください。
登記申請書記載例
住所変更登記の登記申請書の記載例は以下のとおりです。各項目をクリックすると該当箇所にジャンプします。
登記申請書
登記の目的 所有権登記名義人住所変更
原 因 平成15年〇月〇日住所移転
変更後の事項 住所
〇〇県〇〇市〇〇一丁目1番1号
申 請 人
〇〇県〇〇市〇〇一丁目1番1号
甲田A男 (印)
電話番号 01-2345-6789
添付書類
登記原因証明情報
登録免許税 金2,000円
不動産の表示
所在 〇〇県〇〇市〇〇一丁目
地番 1番1
地目 宅地
地積 200.00㎡
所在 〇〇県〇〇市〇〇一丁目1番地1
家屋番号 1番1
種類 居宅
構造 木造かわらぶき2階建
床面積 1階 50.00㎡
2階 50.00㎡
※登記申請書類の組み方については、別ページで解説しています。⇒登記申請書類の組み方
解説
事実関係(前提)
平成5年〇月〇日受付で所有権移転登記を経た所有者甲田A男さんが、平成15年〇月〇日に〇〇県〇〇市〇〇一丁目1番1号に住民票を移しました、というシチュエーションです。
登記簿上の所有者の住所が、最初の登記(平成5年〇月〇日に所有権移転登記)後の事後的要因(平成15年〇月〇日に住所移転)により現在の住所と相違している場合に該当するので、登記名義人住所変更登記をすることになります。
登記申請書
上記の登記申請書の各項目について解説していきます。
登記の目的
登記簿上の所有者の住所を変更する場合、登記の目的は「所有権登記名義人住所変更」と記載します。
原因
登記原因とその日付を記載します。
登記原因日付は、住民票や戸籍の附票に記載されている「住所を定めた日」(住定日などとも書かれています)です。
届出年月日ではなく現実に住所を移した日が登記原因日付となりますので、ご注意ください。
登記原因は「住所移転」と記載します。
登記原因は、住所変更の理由によって様々です。例えば以下のようなものがあります。
- 引っ越しなどで住民票を移したとき⇒「住所移転」
- 住居表示の変更があったとき⇒「住居表示実施」
- 市町村合併などによって町名や地番が変更されたとき⇒「町名地番変更」
詳しくは、『登記名義人表示変更登記の「登記の目的・登記原因・登録免許税」まとめ』をご覧ください。
変更後の事項
変更後の事項として、現在の住所を記載します。
ここに記載する住所は、登記申請書と一緒に提出する登記原因証明情報(住民票や戸籍の附票)の記載と一致していなければなりません。ただし、「〇丁目」の〇は漢数字で表記してください。
不動産の共有者の1人が住所を変更したとき、変更後の事項は以下のような記載になります。
●●は申請人の名前です。
変更後の事項 共有者●●の住所
〇〇県〇〇市〇〇一丁目1番1号
同様に、A不動産は単独所有、B不動産は共有の場合でも、同一人物の住所の変更であればまとめて登記申請することができます。
その場合の変更後の事項は以下のような記載になります。
変更後の事項 所有者及び共有者●●の住所
〇〇県〇〇市〇〇一丁目1番1号
申請人
申請人本人が登記手続きを行う場合
「申請人」として住所変更した方の住所、氏名、電話番号を記載します。
住所と氏名は住民票通りに記載しましょう。ただし、「〇丁目」の〇は漢数字で表記してください。
氏名の横に押す印鑑は認印(三文判)で構いません。
代理人が登記手続きを行う場合
登記申請を代理人が行う場合の「申請人」と「代理人」の記載方法は以下のとおりです。
申請書には代理人が押印します。
登記申請書
~省略~
申 請 人
〇〇県〇〇市〇〇一丁目1番1号
甲田A男
添付書類
登記原因証明情報 代理権限証明情報
令和×年×月×日 〇〇(地方)法務局 御中
代 理 人
〇〇県〇〇市〇〇一丁目1番1号
甲田B子 (印)
電話番号 01-2345-6789
~省略~
添付書類
添付書類の欄には、登記申請書と一緒に法務局へ提出する書類を概括的(おおざっぱ)に記載します。内容は以下のとおりです。
登記原因証明情報
登記原因証明情報とは、登記をする原因となった法律行為や事実行為を証明するために提出する書類の総称です。
住所移転による住所変更登記の登記原因証明情報は、申請人の住民票または戸籍の附票などです。
登記簿上の所有者と申請人が同一人であることを証明するために、登記簿上の住所まで遡る(移転経緯が分かる)ものを添付しなければなりません。
例えば、甲田A男さんが住所A(登記簿上の住所)→住所B(前住所)→住所C(現住所)と住所を何度も移転している場合を考えてみましょう。
通常、現住所の住民票を取得しても前住所までしか記載されていないため、住所Bのときの住民票除票や戸籍の附票(場合によっては除かれた戸籍の附票(除附票)や改製原附票も)をも用意する必要があります。
住民票や戸籍の附票の取得についてはこちらをご参考にどうぞ。⇒住民票の取得方法・戸籍の附票の取得方法
登記原因証明情報は、住所変更の理由によって様々です。例えば以下のようなものがあります。
- 引っ越しなどで住民票を移したとき⇒住民票・戸籍の附票 など
- 住居表示の変更があったとき⇒住居表示実施(変更)証明書
- 市町村合併などによって町名や地番が変更されたとき⇒町名地番変更証明書(単に「証明書」などと呼ばれる場合もあります。)
なお、登記簿上の住所と現在の住所を繋げるための住民票や戸籍の附票が廃棄されている場合はこちらをご覧ください。⇒登記簿上の住所と現在の住所を繋げるための住民票や戸籍の附票が廃棄されている
代理権限証明情報(登記申請を代理人が行う場合のみ)
代理権限証明情報とは、登記申請を代理人が行う場合に必要となる書類の総称です。具体的には委任状がこれに該当します。
登記を他の人にお願いする場合のみ必要となる書類ですので、上記登記申請書記載例には記載していません。他の人にお願いする場合のみ記載してください。
委任状には以下のような記載があればOKです。
委任状
令和×年×月×日
委任者 〇〇県〇〇市〇〇一丁目1番1号
甲田A男 (印)
私は、〇〇県〇〇市〇〇一丁目1番1号 甲田B子を代理人として、下記事項に関する一切の権限を委任する。
記
1.次の登記申請に関する一切の件
登記の目的 所有権登記名義人住所変更
原 因 平成15年〇月〇日住所移転
変更後の事項 住所
〇〇県〇〇市〇〇一丁目1番1号
不動産の表示
〇〇県〇〇市〇〇一丁目1番1の土地
〇〇県〇〇市〇〇一丁目1番地1
家屋番号1番1の建物
登記申請日付・管轄法務局
登記申請する日を記入します。郵送する場合は発送日を記載しておけば問題ないでしょう。
法務局の項目には、不動産所在地を管轄する(登記申請書を提出する)法務局の名前を記載します。⇒法務局の管轄を調べる
登録免許税
住所移転による登記名義人住所変更登記の登録免許税は、不動産1つにつき1,000円です。
例えば、土地と建物が1つずつで合わせて2物件の場合、登録免許税は2,000円となります。
住居表示実施による登記名義人住所変更登記の登録免許税は、登録免許税法第5条第4号により非課税です。
その場合、登記申請書には以下のとおりに記載します。
登録免許税 登録免許税法第5条第4号により非課税
また、町名地番変更による登記名義人住所変更登記の登録免許税は、登録免許税法第5条第5号により非課税です。
その場合、登記申請書には以下のとおりに記載します。
登録免許税 登録免許税法第5条第5号により非課税
不動産の表示
不動産の表示の項目には、土地であれば「所在・地番・地目・地積」を、一般的な建物であれば「所在・家屋番号・種類・構造・床面積」を、それぞれ登記簿謄本(登記事項証明書)のとおり記載します。⇒登記簿謄本(登記事項証明書)の取得
マンションなどの区分建物の場合は書き方が特殊です。
登記簿謄本を見て、一棟の建物の表示の箇所に「建物の名称」がある場合は、以下のように記載します。「敷地権の表示」は敷地権化された区分建物の場合のみ記載します。
不動産の表示
一棟の建物の表示
所在 〇〇県〇〇市〇〇一丁目1番地1
建物の名称 登記なびマンション
専有部分の建物の表示
所在 〇〇一丁目1番1ー101
建物の名称 101
種類 居宅
構造 鉄筋コンクリート造1階建
床面積 1階部分 100.00㎡
敷地権の表示
符号 1
所在及び地番 〇〇県〇〇市〇〇一丁目1番1
地目 宅地
地積 1000.00㎡
敷地権の種類 所有権
敷地権の割合 10000分の1001
一棟の建物の表示の箇所に「建物の名称」がない場合は、一棟の建物の表示の構造などもすべて記載しなければなりませんので、以下のような記載になります。
不動産の表示
一棟の建物の表示
所在 〇〇県〇〇市〇〇一丁目1番地1
構造 鉄筋コンクリート造陸屋根3階建
床面積 1階 500.00㎡
2階 500.00㎡
3階 450.00㎡
専有部分の建物の表示
所在 〇〇一丁目1番1ー101
建物の名称 101
種類 居宅
構造 鉄筋コンクリート造1階建
床面積 1階部分 100.00㎡
敷地権の表示
符号 1
所在及び地番 〇〇県〇〇市〇〇一丁目1番1
地目 宅地
地積 1000.00㎡
敷地権の種類 所有権
敷地権の割合 10000分の1001
参考(法務局ホームページ)
法務局ホームページにも記載例があります。(外部リンク:登記申請書の様式及び記載例)
併せてご確認いただき、不備の無い申請書を作成しましょう。
登記申請書が作成できたら、次は登記申請の方法について見ていきましょう。
登記名義人表示変更登記の「登記の目的・登記原因・登録免許税」まとめはこちら。
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