ここでは「住所更正登記」に関する登記申請書類の作成について見ていきましょう。
住所変更登記をすべきか住所更正登記をすべきかの判断基準については、『変更か更正かを判断するための登記簿の読み方』をご覧ください。
目次
住所更正登記とは?
住所更正登記とは、登記記録上の所有者の住所が登記した当初から誤っていた場合におこなう登記です。
例えば、所有権移転登記を経た所有者が、登記を経た時点ですでに他の住所に住民票を移していた場合や、住所を一部間違えて登記してしまった場合などが該当します。
登記申請書記載例
住所更正登記の登記申請書の記載例は以下のとおりです。各項目をクリックすると該当箇所にジャンプします。
登記申請書
登記の目的 所有権登記名義人住所更正
原 因 錯誤
更正後の事項 住所
〇〇県〇〇市〇〇一丁目1番1号
申 請 人
〇〇県〇〇市〇〇一丁目1番1号
甲田A男 (印)
電話番号 01-2345-6789
添付書類
登記原因証明情報
登録免許税 金2,000円
不動産の表示
所在 〇〇県〇〇市〇〇一丁目
地番 1番1
地目 宅地
地積 200.00㎡
所在 〇〇県〇〇市〇〇一丁目1番地1
家屋番号 1番1
種類 居宅
構造 木造かわらぶき2階建
床面積 1階 50.00㎡
2階 50.00㎡
※登記申請書類の組み方については、別ページで解説しています。⇒登記申請書類の組み方
解説
事実関係(前提)
平成5年〇月〇日受付で所有権移転登記を経た所有者甲田A男さん。住所を「〇〇県〇〇市〇〇一丁目1番1号」と登記すべきところ、誤って「〇〇県〇〇市〇〇一丁目10番10号」と登記してしまった(登記官も見落としそのまま登記された)ことに気が付いた、というシチュエーションです。
最初の登記の時点ですでに住所を誤っているので、登記名義人住所更正登記をすることになります。
登記申請書
上記の登記申請書の各項目について解説していきます。
登記の目的
登記簿上の所有者の住所を更正する場合、登記の目的は「所有権登記名義人住所更正」と記載します。
原因
登記原因は「錯誤」と記載します。日付は記載しません。
詳しくは、『登記名義人表示変更登記の「登記の目的・登記原因・登録免許税」まとめ』をご覧ください。
更正後の事項
更正後の事項として、正しい住所を記載します。
ここに記載する住所は、登記申請書と一緒に提出する登記原因証明情報(住民票や戸籍の附票)の記載と一致していなければなりません。ただし、「〇丁目」の〇は漢数字で表記してください。
不動産の共有者の1人が住所を更正したとき、更正後の事項は以下のような記載になります。
●●は申請人の名前です。
更正後の事項 共有者●●の住所
〇〇県〇〇市〇〇一丁目1番1号
同様に、A不動産は単独所有、B不動産は共有の場合でも、同一人物の住所の更正であればまとめて登記申請することができます。
その場合の更正後の事項は以下のような記載になります。
更正後の事項 所有者及び共有者●●の住所
〇〇県〇〇市〇〇一丁目1番1号
申請人
申請人本人が登記手続きを行う場合
「申請人」として住所更正する方の住所、氏名、電話番号を記載します。
住所と氏名は住民票通りに記載しましょう。ただし、「〇丁目」の〇は漢数字で表記してください。
氏名の横に押す印鑑は認印(三文判)で構いません。
代理人が登記手続きを行う場合
登記申請を代理人が行う場合の「申請人」と「代理人」の記載方法は以下のとおりです。
申請書には代理人が押印します。
登記申請書
~省略~
申 請 人
〇〇県〇〇市〇〇一丁目1番1号
甲田A男
添付書類
登記原因証明情報 代理権限証明情報
令和×年×月×日 〇〇(地方)法務局 御中
代 理 人
〇〇県〇〇市〇〇一丁目1番1号
甲田B子 (印)
電話番号 01-2345-6789
~省略~
添付書類
添付書類の欄には、登記申請書と一緒に法務局へ提出する書類を概括的(おおざっぱ)に記載します。内容は以下のとおりです。
登記原因証明情報
登記原因証明情報とは、登記をする原因となった法律行為や事実行為を証明するために提出する書類の総称です。
錯誤による住所更正登記の登記原因証明情報は、以下のようなものが必要です。
(1)住民票や戸籍の附票(場合によっては、住民票除票・除かれた戸籍の附票(除附票)・改製原附票も)
登記した時点ですでに誤っていたことを証明するために、住民票や戸籍の附票は登記受付年月日まで遡るものを添付しなければならないのが原則です。
住民票や戸籍の附票の取得についてはこちらをご参考にどうぞ。⇒住民票の取得方法・戸籍の附票の取得方法
(2)不在籍証明、不在住証明
登記簿上の住所を本籍地・住所地とした同じ氏名の人がいないことを証明するために添付します。
不在籍、不在住証明の取得についてはこちらもご参考にどうぞ。⇒登記簿上の住所と現在の住所を繋げるための住民票や戸籍の附票が廃棄されている
(3)対象不動産の権利証(または登記識別情報)
対象不動産の権利証あるいは登記識別情報を提供させることにより、申請人が所有者であることを証明するために添付します。
なお、上記(2)や(3)は必ず添付を要するものではありません。
登記官が「確かに住所が誤っていた」と認めれば(1)のみで足りますし、(1)だけでは住所のみ誤っていたという心証が形成できなければ他の書類で認めてもらわざるを得ません。
法務局の裁量が大きく働く部分ですから、何をもって良しとするかを必ず事前に確認しましょう。
代理権限証明情報(登記申請を代理人が行う場合のみ)
代理権限証明情報とは、登記申請を代理人が行う場合に必要となる書類の総称です。具体的には委任状がこれに該当します。
登記を他の人にお願いする場合のみ必要となる書類ですので、上記登記申請書記載例には記載していません。他の人にお願いする場合のみ記載してください。
委任状には以下のような記載があればOKです。
委任状
令和×年×月×日
委任者 〇〇県〇〇市〇〇一丁目1番1号
甲田A男 (印)
私は、〇〇県〇〇市〇〇一丁目1番1号 甲田B子を代理人として、下記事項に関する一切の権限を委任する。
記
1.次の登記申請に関する一切の件
登記の目的 所有権登記名義人住所更正
原 因 錯誤
更正後の事項 住所
〇〇県〇〇市〇〇一丁目1番1号
不動産の表示
〇〇県〇〇市〇〇一丁目1番1の土地
〇〇県〇〇市〇〇一丁目1番地1
家屋番号1番1の建物
登記申請日付・管轄法務局
登記申請する日を記入します。郵送する場合は発送日を記載しておけば問題ないでしょう。
法務局の項目には、不動産所在地を管轄する(登記申請書を提出する)法務局の名前を記載します。⇒法務局の管轄を調べる
登録免許税
登記名義人住所更正登記の登録免許税は、不動産1つにつき1,000円です。
例えば、土地と建物が1つずつで合わせて2物件の場合、登録免許税は2,000円となります。
不動産の表示
不動産の表示の項目には、土地であれば「所在・地番・地目・地積」を、一般的な建物であれば「所在・家屋番号・種類・構造・床面積」を、それぞれ登記簿謄本(登記事項証明書)のとおり記載します。⇒登記簿謄本(登記事項証明書)の取得
マンションなどの区分建物の場合は書き方が特殊です。⇒マンションの「不動産の表示」の記載方法
参考(法務局ホームページ)
法務局ホームページにも記載例があります。(外部リンク:登記申請書の様式及び記載例)
併せてご確認いただき、不備の無い申請書を作成しましょう。
登記申請書が作成できたら、次は登記申請の方法について見ていきましょう。
登記名義人表示変更登記の「登記の目的・登記原因・登録免許税」まとめはこちら。
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